俺たちに明日はない、こともない。

こっちと向こうと今と昔と。

カンチャナブリーへ 23

結局そう遅くならずかといって早すぎることもなく

バンコクまで帰ってこられたようである。

大いに心は満たされているがどうやらお腹がすいている。

予めリストアップしてあった食事場所のうちから

モーチットの4つ先、BTSビクトリーモニュメント駅近くの

「イサーン・ロムイェン」

を目指すことにする。

ここでもスマホが使えないので記憶だけが頼り。

確か、駅からの通りをこっちに歩いた通り沿いに、

と進んでみるとそれらしきレストラン。

ん?なんか違う。

結局お店の画像がどうにか頭に引っかかっていてくれたおかげで

通りを挟んだ向かいにあった「イサーン・ロムイェン」に

無事到着。

オープンエアーで結構混んでいる。

男性の店員さんがややてんぱり気味でいらついているのが傍目にも

よくわかる。入れるかな?

幸い年配の女性のマダムっぽい方が席に案内してくれる。

何はともあれビール!

 

 

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見つかった!イサーンロムイェン。この看板が決め手となる。腹減った!

 

 

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イサーンロムイェンの様子。ここ良かったなー。

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あー、ようやく、ここまで・・・飲むぞ!!


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写真撮るの忘れて食べちゃいました。ウルトラうめ~!

 

この日初めてのまともな食事!

む・う~ンまい!

きょう一日の充実感といまだおさまらない胸の高まり、そして胃袋からの

突き上げがあいまってもう言葉にならない。

 

 

食事の後はやはりまだ少し飲み足りない、

というわけで

訪れるなら「イサーン・ロムイェン」とセットで、と考えていた

ライブバー「サキソフォン」へ。

これも頭の中の地図が頼り。

奇跡的に迷うことなく駅近くの1本路地を入ったところに発見。

ドアを開けて中に入る。

空気感が違う。お洒落だぞ、ここ。

黒服の男性、そして

ロングドレスのたいへん美しいタイのおねえさんがにっこりと微笑みながら

なにやら手渡してくれる。

チョコレート。

そうだったんだ。

その日は2月14日。バレンタインデーだった。

ステージを半円状に囲んでいるカウンター、席は空いているのにそちらへは

案内されず(やっぱりね)ステージに背を向けたカウンター席へ。

オン・ザ・ロックを。

あらためてささやかな祝杯。

客席は欧米人が多い。

ステージでは男性シンガーがアコギ片手に切々とバラードを奏でている。

聴いたことことのある曲だが思いだせない。

本当はジャズかブルースを聴きたかったがこれはこれでよい。

バレンタインなんだし。(なんか、なぜか、せつないけれど。)

アルコールが心地よくまわってくる。

 

 

 

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サキソフォン」で買ってきたお土産ビアマグ。思い出しつつ飲む!

 

ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。

初めての海外一人旅、初めてのタイ

王宮周辺やアユタヤも併せて

ハラハラドキドキ

とても楽しくて

帰ってきてからは

何かしら得体の知れない自信みたいなものも感じられてきて

一生忘れられない経験となりました。

実はこれに味をしめてこの後タイ・チェンマイにも一人旅を敢行することに

なったのですが、それはまた別の機会に。


好き勝手に、だらだらと書き連ねているうちに

世界は一変

コロナ騒ぎで旅に出ることもままならなくなってしまいました。

きょう5月25日現在

緊急事態宣言は解除されるようです。

私たちの生活がもとに戻るまでにはもう少しの辛抱が必要です。


そのときになったら

旅に出てみようという方、ちょっと躊躇している方に

何かしら参考にしていただければ幸いです。

ともかく楽しかった!!くせになりそうですね、タイは。

 

 

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バンコクに着いた翌朝のホテルからの光景。さあ、始まるぞ!

 

 

 

カンチャナブリーへ 22

ようやくうとうとしはじめて

どうやら都市の中に紛れこんだらしいと気が付いたときには乗客も残り3人。

車が定められた進入経路に従って右折左折を繰り返すようになる。

辺りはビルが立ち並んでいる。

道が混んでいる。

 

18:50 車が左に寄っていって緩やかに停車。

ササノが振り向いて

「○△□・・・」

と私に告げた。

「モーチット?」

念のため確認。

頷くササノ。

 

・・・着いたんだ~・・・

 

向こうを出たのが16:00くらいだったから2時間50分の道のりだった。

2人の乗客に続き車を降りるさいに

「コッフン・カップ

とお礼を言う。

ササノが目尻にたくさんしわをつくって頷く。

タイのおっちゃんたちは一見強面にみえても笑うと愛嬌があるんだね。

いい人だな、と思いつつ車を後にしようとすると

なにやらどやしつけられる。

ドアを閉めるのを忘れていた。

 

 

モーチットバスターミナルに着いたのはよいが

さあ、ここでもどっちへ行けばいいのかわからない。

今来た道路の向こうにはネットで見た覚えのある

大きなドーム状の建物がネオンの中に輝いている。

振り返ってみると待合所のような壁面のガラスの建物がある。

google mapは使えないしあたりは既に暗い。

しばらくうろうろして標識など見てみるが分かるわけがない。

このバスターミナルからBTSモーチット駅までは

頑張れば歩いていけない距離ではなかったはず。

けどずっと座りっぱなしだったとはいえかなり疲れている。

もうタクシーを捕まえるしかない、と判断。

なんたってターミナルなんだからタクシーなんてすぐに掴まるさ、

と思っているとちょうど斜め前方に客を降ろしているタクシーを発見!

逃してなるものか、とダッシュ

目的地が近すぎるかな、と思ったけれど

 

「ヤーク・パイ・サタニー・ロッファイ・モーチット・BTS、OK?」
 (BTSのモーチット駅に行きたいです。大丈夫ですか?)

 

と、若い運転手に訊いてみると頷いてくれた。

良かった~!

そこからは10分程度だったと思うけれど、あ、高架が見えたな、

と思ったらもう駅への上り口の近く、まぎれもないモーチット駅だった。

頭のてっぺんから爪先まで、その輪郭にそって内側からふわっとした

暖かいものが拡がっていくような感覚。

 

やったー、着いたー!!

 

料金を支払いタクシーを降りると今度はしっかりドアをしめる。

安堵感につつまれながらしばらくその場に立っている。

良い気分。

とても、とても、

良い。

 

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バンコク中心部風景。東京と変わらないな。

 

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サイアムディスカバリーだったかセンターだったかのトイレ。オシャレ!

 

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電線。残像が濃い。

 

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タラトロットファイラチャダ- お約束。

 

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有名店ではないところのプーパッポンカリー(殻なし)。美味しかった。でも小さい方を頼んだけど量が多くて。

 

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タイ初日の晩御飯で食べたトムヤムクン。これも美味しい!けど食べてよいのかどうか分からないものが沢山はいってた。

 

 

 

 

 

カンチャナブリーへ 21

さて、私を含めて11人でロットゥーはようやく出発。

(全員集合したところで料金が徴収される)

車内はしっかり冷房が効いている。

心配していたような寒すぎるということはなかったけれど

なんと(# ゚Д゚)  私の座っている座席の斜め後ろの天井吹き出し口から時折

水が垂れてくる。

 

運転手はササノであった。

俳優の笹野高史のガラの悪い腹違いの弟のような雰囲気を漂わせているが

このササノは運転に関して相当な技量の持ち主であることがわかった。

ミラー越しに彼の表情をみていると実に鋭い。

こめかみが尖がり目が血走っているように見える(実際は一番後ろに座っている

のだからそこまで見えるわけはないのだけれど)。

プロだから、そしてタイだから、これがスタンダードなのかもしれないが、

いやー、速い。速いけど怖い。隙間があると見定めるや次々と車線を変更し、

少しでも前へ、前へと車を押し出していく。車間距離も信じられないほど近い。

周りの車をみていると「ロットゥーだからしょうがないか。」という気配も

伺える。

ロットゥーの事故で観光客が犠牲になったことがあったらしいが、

さもありなんという気がする。

安全第一の人にはあまりすすめられないですよ、本当に。

 

まったく知らなかったがこのロットゥーには途中から乗り込んでくる人も

いる。

停留所的なところに停まるのならわかるが、そうではなく

普通の道端に止まった、と思うと

人が近づいてくる。

そうして人を拾っていく。

事前に予約を受付け打合せをしているのだろうか。

システムがよくわからない。

やはり普通の道端みたいなところで降りていく客もいる。

会社によるのか、路線によるのか。

そういう意味では自由度が高い乗り物だ。

 

途中2、3か所、中継所みたいなところにも寄る。

ササノが降りて行って丁度ハンコをもらっているような感じである。

きっと運行状況を会社が管理しているのだろう。

ということはすなわち時間もきっちりチェックされているに違いない。
(そりゃ飛ばすわな~)

一日何往復するのだろうか。

 

ところで

乗客の乗り降りを繰り返すうちにふと

自分はモーチットのバスターミナルを終点だと決めてかかっていたけれど

本当にそうなのかという疑問がわいてくる。

けど日本人(外国人)は私一人のようだったし、他ならぬササノに直接行先を

告げているのだから到着すれば教えてくれるはずだ。きっと。

あらためてササノの顔をミラー越しに眺める。

集中力は衰えていないようだ。

 

真昼間にカンチャナブリ―を出発したのだがいつのまにか陽が傾いてきている。

バンコクまであとどれくらい?

 

 

 

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早くビールが飲みたい!車の中ではそれしか考えられず。

 

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今回は写真がないので旅の思い出編。出発前日に食べた晩御飯。ご存知ガパオ!間違いないです。美味かったな!

 

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宿泊していたホテルの近くの街並み。サパーンタクシン駅から7分くらい。懐かしい。

 

 

 

 

 

カンチャナブリーへ 20

なんとか帰りの目途がついてほっとしたのは良いが、

乗り込んだ車に他の乗客はいない。

どうやらその車の最初の乗客だったようだ。

御存知の通りロットゥーは客を定員まで載せないと出発しないので

どれだけの待ち時間になるのか見当もつかない。

バイクのおっちゃん、キチンとこちらの行先に応じたロットゥー

のところまで連れてきたくれたんだな。

いや、結局つるんでいてマージンもらってるのか。

そんなことを思いつつもしばらくはボーッとしていたが、

せっかく時間があるのだから少しはカンチャナブリ―の街をぶらぶら

してみたい、と思っているとポツポツと乗客が乗り込んでくる。

それでも合計3人。

大丈夫だろう、と思って車を降りるとササノが目ざとくこちらを見咎め

飛んでくる。

「ホングナーム・ユーティー・ナイ・クラップ!」
(トイレはどこですか!)

せめてもの抵抗。

結局カンチャナブリ―ではバスターミナルを1周しただけで観光は終わって

しまった。

 

ここでカンチャナブリ―からバンコクまでロットゥーで移動することを考えて

いる方に改めてお伝えしたい。

1,上記の通り、ロットゥーは定員になるまで出発しないので、自分の思惑通り

の時間で移動することは難しい。

 その車両の最後の方に乗り込んだ乗客であれば出発までそう待たされることは

ないであろうが、私のように最初に乗り込んでしまうと待ち時間は相当なもの

になる。

バンコクで○時にレストランを予約しおいたとか、○時の飛行機に乗るとか、

その後に予定を組んでいる人はこの点を考慮しておいてほしい、というかそうした

予定は組まない方が無難である。

 

2,カンチャナブリ―でどこかを観光したいということであれば

荷物扱いされることは是非とも避けなければならない。

生憎バイク(モーターサイ)のことしか分からないが、

カンチャナブリーでの行動スケジュールがしっかり決まっている人は

それを伝えればよいけれど、漠然としか定まっていない人は

バイクを見つけて交渉する時点で一工夫が必要だろう。

私のように例えばカンチャナブリ―のバスターミナルまでは行きたいが、すぐには

バンコクに向かいたくない、という人はバイクのおっちゃんにキチンと

話をしておくか、万一ロットゥー会社の人がやってきたとしても辺りを観光するので

今はのらない、と断るなど毅然とした態度を貫いて欲しい。

ま、私としてはせめて周辺を散策してお茶くらい飲めれば十分であったのだけれど。

 

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ロットゥー内部。ようやく2人目の乗客。

 

 

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車窓からの眺め。出してくれ~!

 

 

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カンチャナブリーバスターミナル。トイレにしか行けなかった。

カンチャナブリ―へ 19

バイクに乗る前だったか、

おっちゃんが、確か

「ユー・アー・ラッキー」

と言ったように記憶している。

どういう意味だろう?

俺みたいな良心的なバイク運転手に出会えてラッキーだね、

という意味か、

あるいは、普通こんな風にバイクを捕まえることはできないんだよ、

という意味か。

ともかくもバイクは動きだした。

通りの道幅は広い。

けれどやはり対向車にも出会わず歩いている人も見かけない。

昼寝でもしているのだろうか。

とても静かでただバイクの音だけが響いている。

もし時間があれば歩いてみたいような異国の通りだ。

 

 

さすがにおっちゃんがスピードを加減してくれているのが分かる。

そりゃそうだ。

それでも自然とおっちゃんの腰に回した腕やまたがった太ももには

力が入る。

角を曲がったりするのに減速、加速をされるとお尻がシートの上を

滑りそうな気がして悲鳴を上げそうになる。。

 

フ、ファ、フウァーア~!・・・フゥー!
(最後のフゥーは安堵。)

 

からだに加速度がかかる度に息を詰め、股関節に力を入れ、

速度が緩やかになると息をつく。

しばらくして片側2車線の車がビュンビュン走っている広い通りにでる。

あ、これが国道かな。

ここまで出てこれればまた違った展開になったのかもしれない。

でもWiFiなかったんだもん。

交通量が増えるとやはり怖い。

傍らを走る車、車時々バイク。

そんなに寄らないで~、ヒエ~

さらに必死にしがみつく。

車の荷台にのったおばちゃんたちがこちらを見て笑っているような気がする。

被害妄想か。

しばらくして

国道から1本入って

あ、街中に入ったな、と思って何度か角を曲がるとロットゥーやバスが

ずらりと停まっている場所に辿り着く。

ここか。カンチャナブリ―のバスターミナル。

半ば放心状態でバイクを降りる。

股関節が緊張しすぎたせいで足ががくがくする。足どりも覚束ない。

 

「・・・コッフン・カップ!」

 

料金を払うがうっかりチップを渡すのを忘れてしまう。
(親切にしてくれたのに。おっちゃん、ゴメン!)

それというのも放心状態だったのとひとりの男がこちらの方にかけてきて

バイクのおっちゃんと話し始めたからだ。

かけてきた男(俳優の笹野高史に似ている。以下ササノ)がこちらに

話かけてくる。

きっと行先を尋ねているのだろうと思い、

「モーチット。サタニ―・コンソン・モーチット。」

舌になじんだ言葉を繰り返す。

頷いたササノは私を引っ張るようにして1台のロットゥーに案内すると後ろの座席に

押し込めた。

バイクのおっちゃんと出会ってから僅か20分程の出来事ではなかったか。

何か信じられないような気がするがなんとか

バンコクに戻るための席は確保できたようだ。

ただただ安堵。

 

でも、思う。

宅配便の荷物じゃん、これじゃ。

 

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自分でも驚いたがどうやら乗せてくれたバイクのおっちゃんの写真を撮っていたらしい。よっぽど舞い上がっていたんだろう。チップもあげないで・・・

 

 

 

 

 

カンチャナブリ―へ 18

まだ歩いて行ってはいなかったその通り。

今覚えている限りでいうと

タムクラセーから戻ってきて降りたクウェー川鉄橋駅の

進行方向右側、後ろの方で橋に近い方で駅から遠ざかる方向に

伸びている道である。

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この道が運命を変えた!か。

 

しばらく前にざっと眺め渡したときには誰ひとり見えなかった

ようだったが。

歩いているとものの30秒も経たないうちにバイクが1台とまっている

のが目にとまる。

と同時にヘルメットをかぶりサングラスをかけたおっちゃんが近づいて

くる。

うっそみたい!

この機会を逃してなるものか!

 

私「ヤーク・パイ・サタニ―・コンソン・カンチャナブリ―」
 (カンチャナブリ―のバスターミナルに行きたいです。)

おっちゃん「バンコク?」

私「イエス。サタニ―・コンソン・モーチット。」
 (はい、モーチットのバスターミナルへ行きたいです。)

ちょっとこのときのやり取りの記憶は今となっては定かではないのだが

この時点で

カンチャナブリ―のバスターミナルへ行きたいということだけではなくて

そこから(勿論バスで)

バンコクのモーチットのバスターミナルまで行きたいということを

説明したはずである。

ご承知のとおりバンコクには北と南に主要なバスターミナルがあるそうだが

私は北バスターミナル(モーチット・マイ、あるいはモーチット2

ともいうらしい。南バスターミナルはサイ・タイ・マイだとか)

に行ってもらった方が都合がよかった。

私「ラーカー・タオライ・カッ(プ)?」
 (いくらですか?)

おっちゃん「○△×・・・」

と言って指を5本出す。

50バーツか!80バーツまでなら良心的だとどこかでみたような記憶が

あったので(私の記憶はあまりあてにならないが)即決だ。

(このときの状況だったら100バーツでもOKしていただろう。)

交渉成立!

これでカンチャナブリ―まで行ける!

おっちゃんがバイクのエンジンをかける。

よっしゃ!

とテンションが上がったのも束の間、ここではたと気づく。

ずっと荷台にシートがあるあの車(ソンテウ)。

あれに乗ることしか想定していなかったのだ。

自慢ではないが

生まれてこの方

バイクの後ろに乗って走ったことは一度もなかった。

とにかくおっちゃんの後ろにまたがりはしたが

あらら、困った。

どこつかまるんだ!足はどうするんだ!

今しも走り出しそうなおっちゃんにあわてて

「ストーップ!ストップ!あー、うー
 ハウ、ハウ・ツー!」

殆ど叫んでいるがきっと意味不明だろう。

無意識のうちに周囲に助けを求めるようにあたりを見回している自分。

ふと気付くとちょっと離れたところのイスに座ったおばちゃんがこちらを

見て手を叩いて笑っている。そして両腕を前にまわして掴まる仕草をして見せてくれ

る(こういうところ優しいよね)。

そうか、おっちゃんにしがみついていいのか。

もう、なりふり構っていられない。

ガシッ、とホールド。

「OK!」

即座にバイクは発進。途端にからだが加速度を感知。すぐさま腕と足に自然と力がこも

る。

風景が後ろへ後ろへ移動し始めるや否やからだの外側から中の方にまでへ風が吹寄せて

くる。

 

しばし恍惚。

 

でも、

ちょっと、ちょっと、

俺 ヘルメットなしか!

カンチャナブリ―へ 17

その観光案内所と目される小屋のガラス戸をノックしてみる。

外からは中が見通せない。

誰もいなかったりして。

我しらず自分のこれまでの人生を振り返っている。

これまで

いざというとき、

ここ、というとき、

どうだったろうか。

こんなときに中に人がいない、なんてことは

まさかまさかそんなことは

ない、

こともないな。おおいに・・・(泣)

再びノックするとすぐに

ガラリと戸があき中から女性が顔を出す。

 

 

 

 

       

 

 

   おー!

 

一気にテンションがあがる!鳥肌ものだ!

安堵するより先に言葉が堰を切ったようにでてくる。

「ヤーク・パイ・サタニ―・コンソン・

  カンチャナブリ―!」
(カンチャナブリ―のバスターミナルにいきたいです。)

 

事前にシミュレーションしていたので

流れるようにタイ語が出てくる。

(このとき程覚えておいて良かったと思ったことはない!)

すらりと出たが、気持ちが相当うわずっていたのだろう

相手の返事もまたずなぜかいきなり英語まででてくる。

「アー ゼア エニー・・・カー ・・・サムシング ライク・・・オア・・・モーターバイク・・・」

 

こちらはシミュレーションしてなかった。

やはり無理は隠せないけどめげている余裕はない。

「ブーン、ブーン(ハンドルを持って動かすアクション)、 サタニ―・コンソン・カンチャナブリ―!」

 

もうメタメタである。

尋常でない気配を感じとったのか、奥からもうひとり女性がでてきて

二人で何か話はじめる。すぐにそろって線路の反対側の通りを指さす。

取り敢えず言いたいことは通じたようだが、そっちに何があるのだろう。

そちらへはまだ歩いて行っていなかった。

とにかく行ってみよう。

「コッフン カッ(プ)」

半信半疑で指さされた方へ歩いていく。

 

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案内所の女性たちが指さした方を見てみる。確かにさっきまでは感じられなかった人の姿が・・・