カンチャナブリーへ 22
ようやくうとうとしはじめて
どうやら都市の中に紛れこんだらしいと気が付いたときには乗客も残り3人。
車が定められた進入経路に従って右折左折を繰り返すようになる。
辺りはビルが立ち並んでいる。
道が混んでいる。
18:50 車が左に寄っていって緩やかに停車。
ササノが振り向いて
「○△□・・・」
と私に告げた。
「モーチット?」
念のため確認。
頷くササノ。
・・・着いたんだ~・・・
向こうを出たのが16:00くらいだったから2時間50分の道のりだった。
2人の乗客に続き車を降りるさいに
「コッフン・カップ」
とお礼を言う。
ササノが目尻にたくさんしわをつくって頷く。
タイのおっちゃんたちは一見強面にみえても笑うと愛嬌があるんだね。
いい人だな、と思いつつ車を後にしようとすると
なにやらどやしつけられる。
ドアを閉めるのを忘れていた。
モーチットバスターミナルに着いたのはよいが
さあ、ここでもどっちへ行けばいいのかわからない。
今来た道路の向こうにはネットで見た覚えのある
大きなドーム状の建物がネオンの中に輝いている。
振り返ってみると待合所のような壁面のガラスの建物がある。
google mapは使えないしあたりは既に暗い。
しばらくうろうろして標識など見てみるが分かるわけがない。
このバスターミナルからBTSモーチット駅までは
頑張れば歩いていけない距離ではなかったはず。
けどずっと座りっぱなしだったとはいえかなり疲れている。
もうタクシーを捕まえるしかない、と判断。
なんたってターミナルなんだからタクシーなんてすぐに掴まるさ、
と思っているとちょうど斜め前方に客を降ろしているタクシーを発見!
逃してなるものか、とダッシュ。
目的地が近すぎるかな、と思ったけれど
「ヤーク・パイ・サタニー・ロッファイ・モーチット・BTS、OK?」
(BTSのモーチット駅に行きたいです。大丈夫ですか?)
と、若い運転手に訊いてみると頷いてくれた。
良かった~!
そこからは10分程度だったと思うけれど、あ、高架が見えたな、
と思ったらもう駅への上り口の近く、まぎれもないモーチット駅だった。
頭のてっぺんから爪先まで、その輪郭にそって内側からふわっとした
暖かいものが拡がっていくような感覚。
やったー、着いたー!!
料金を支払いタクシーを降りると今度はしっかりドアをしめる。
安堵感につつまれながらしばらくその場に立っている。
良い気分。
とても、とても、
良い。